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20歳前に発症した精神疾患でも障害年金は受給できます

近年、若年者の精神疾患が深刻な社会問題となっています。
厚生労働省の調査によると、10代から20代にかけて精神疾患の有病率は高くなり、
20代前半では男性で約20%、女性で約30%が何らかの精神疾患を経験していることがわかっています。
 
うつ病や統合失調症などに加え、不安障害、摂食障害、発達障害なども増加傾向にあります。
社会の変化や価値観の多様化、SNSの普及、学業や就職へのプレッシャーなどが背景にあると考えられています。

20歳前にうつ病や統合失調症などの精神疾患を発症された方の中には、「障害年金なんて無理かな」とあきらめてしまう方も多いのではないでしょうか。
しかし、そんなことはありません。
要件が合えば20歳前にうつ病や統合失調症などの精神疾患、発達障害を発症された方でも、障害年金を受給できる可能性はあります。

そこで今回は、20歳前に精神疾患を発症された方に向けて、障害年金申請のポイントをわかりやすく解説します。

目次

障害年金は「社会保障」である

10~20代の時期は、その後の人生で重要となる学力や対人関係能力、生活能力などを発展させる重要な時期です。そのためこの時期に精神的な不調や障害を抱え、適切な治療や支援につながることができないと症状や障害が重症化、慢性化するだけでなく、日常生活や社会生活を送ることが困難となります。仕事に就くことが難しくなるため、経済的な不安から症状が悪化するケースも少なくありません。

精神疾患への理解や認知度が低いため、適切な支援を受けられずに苦しんでいる人が多いのが現状です。また、精神疾患への偏見や差別が根強く残っており、患者の社会復帰を妨げる要因となっています。

障害年金は「社会保障」の一つです。病気やケガが原因で日常生活や仕事に大きな支障が出ている人達を経済的に助けるための救済制度です。
申請ができるのは20歳になってからですが、適切な準備を行えば、20歳前に発症した精神疾患でも障害年金を受給できる可能性はあります。

当事務所でも、学校生活などでいじめにあい、不登校からうつ病や統合失調症を発症された方、発達障害の2次障害でうつを発症された方など、20歳前に精神疾患を発症され、20歳になってから障害年金の申請をお手伝いさせていただいた方は多数いらっしゃいます。

経済的な不安が軽減されれば、それだけ心理的な負担も軽減されます。
障害年金を受給できるようになれば、自分のペースで仕事をしながら、治療を継続することも可能になります。

20歳前に発症した精神疾患 申請の条件

20歳前に精神疾患を発症された場合でも、以下①~③の条件を満たせば障害年金を受給することができます。

①障害の原因となった病気やけがの初診日が20歳前であること
※初診日とは
 障害の原因となった病気やケガについて、初めて医師又は歯科医師の診察を受けた日をいいます。同一の病気やけがで転医があった場合は、一番初めに医師等の診療を受けた日が初診日となります。

②障害の状態が、障害認定日(障害認定日以後20歳に達したときは、20歳に達した日)に、障害等級表に定める1級または2級に該当していること
※障害認定日とは
 障害の程度の認定を行うべき日をいい、請求する傷病の初診日から起算して1年6か月を経過した日

③保険料納付要件
20歳前の年金制度に加入していない期間に初診日がある場合は、納付要件は不要です。

障害年金申請のポイント

申請をスムーズに進めるには、準備が大切です。
若年者の精神疾患のご相談事例として多い「うつ病」「統合失調症」「知的障害」「発達障害」等の傷病の確認ポイントを見ていきましょう。

うつ病の確認ポイント

うつ病は、精神的ストレスや身体的ストレスなどを背景に、脳がうまく働かなくなっている状態です一日中気分が落ち込んでいる、何をしても楽しめないといった精神症状とともに、眠れない、食欲がない、疲れやすいなどの身体症状が現れ、日常生活に大きな支障が生じてきます。
また、自分は役に立たない人間だなど否定的な感情に支配され、「死んでしまいたい」と思うようになる場合も少なくありません。
子どものころに受けた虐待や学校でのいじめなど、つらい体験から変調をきたし、成人しても様々な症状に苦しめられるケースが多くあります。

うつ病の場合、最初は不眠や意欲の減退など身体症状が現れることが多いので、未成年であれば心療内科や思春期外来等を受診することが多いでしょう。
そのような症状で最初に医療機関を受診した日が「初診日」です。

精神疾患の場合、長期にわたって治療を受けるケースも多く、心療内科や精神科を転々とし、その間に診断名が変わる場合もあります。
障害年金を申請しようと思っても、初診がどの病院だったかわからない、あるいはずいぶん前なので病院が閉鎖しているといったことも往々にしてあり、そうなると「初診日」の証明は困難となります。

初診日の証明ができない場合、精神保健福祉手帳やその申請時の診断書のコピー、お薬手帳や診察券、領収書など様々な資料を用いて証明する方法があります。ですので、精神疾患で医療機関を受診した時は、なるべく記録を残すよう心がけでください。

統合失調症の確認ポイント

統合失調症は、脳の様々な働きをまとめることが難しくなるために、幻覚や妄想などの症状が起こる病気です。発症の原因は正確にはよくわかっていませんが、統合失調症になりやすい要因をいくつかもっている人が、仕事や人間関係のストレス、就職や結婚など人生の転機で感じる緊張などがきっかけとなり、発症するのではないかと考えられています。
好発年齢は思春期から30歳までで、発症年齢の平均は男性が27歳、女性が30歳で男性の方がやや低くなっています。

統合失調症の症状は大きく分けると陽性症状、陰性症状、認知機能障害の3つに分けることができます。
陽性症状は、活動的で目立った症状で、妄想、幻覚(幻聴が多い)、思考障害などです。
陰性症状は、本来の機能が弱まったり失われたりする変化で、感情の平板化(感情鈍麻)、思考の貧困、意欲の欠如、自閉(社会的ひきこもり)などです。
認知機能障害は、記憶力の低下、注意・集中力の低下、判断力の低下などです。

統合失調症で障害年金を申請するポイントですが、病状もさることながら、それによって日常生活能力がどの程度障害されていたかが重要になります。
統合失調症の特徴として、本人に病識がなく、日常生活能力に対する本人の評価と、周りで支える家族等の評価に差があることも少なくありません。そのような時に家族からの情報はとても役に立ちます。
医師に診断書をお願いする時には、家族が同席してもらうことはメリットとなります。本人の現状や困りごと、家族等のサポート状況を正確に医師に伝えることが重要です。

さらに詳しくは下記をご参照ください。

知的障害・発達障害の確認ポイント

知的障害とは、文部科学省によると、一般に、同年齢の子供と比べて、「認知や言語などにかかわる知的機能」の発達に遅れが認められ、「他人との意思の交換、日常生活や社会生活、安全、仕事、余暇利用などについての適応能力」も不十分であり、特別な支援や配慮が必要な状態とされています。また、その状態は、環境的・社会的条件で変わり得る可能性があると言われています。
知能テストでおおよそIQ70以下を指しますが、日常生活での適応困難が認められなければ、知的能力障害とは診断されません。

知的障害の場合、療育手帳の取得、検査等により医師から知的障害であると診断された場合などは「初診日」の証明は必要ありません。この場合「初診日」は「出生日」となります。

知的障害で障害年金を申請する時の確認ポイントは、やはり日常生活や仕事においての支障がどの程度あるのかという点です。
IQが50を超える場合、知的障害が軽度のため、中度以上の人に比べ審査は厳しくなります。
精神障害の等級判定ガイドラインには「療育手帳の区分判定が中度以上(知能指数がおおむね50以下)の場合は1級または2級を検討する」とあります。
このため、IQが50を超える場合は、その数値のみでは支障が軽度と判断されやすいため、診断書や病歴・就労状況申立書でどのような支障があるのかを訴えることが必要となります。


発達障害の確認ポイントについては、下記のリンクをご参照ください。

20歳前に発症した精神疾患での受給事例

相談者:20代男性
診断名:うつ病
初診日:15歳
症状:意欲低下、うつ症状
受給状況:障害基礎年金2級(年間約80万円)

高校入学後、難病に罹患。将来に対して悲観的になり、精神的に不安定な状態になる。親の勧めで心療内科を受診し、うつ病と診断される。約10年治療を継続したが、回復せず障害年金の申請を行う。

〇受給ポイント
初診から10年近く経過しており、病院にカルテが残っているか心配であったが、当時から電子カルテであったため初診の証明を得ることができた。
日常生活の困難さがうつ病だけによるものでなく、難病が影響していると年金機構に判断される恐れがあったため、うつ病による日常生活の困難さを詳細に病歴・就労状況申立書に記載した。

具体的な受給事例は、下記のリンクをご参照ください。

まとめ

20歳前にうつ病や統合失調症などの精神疾患、発達障害を発症された方でも、
障害年金を受給できる可能性はあります。
この制度を活用して、少しでも安心して生活を送れるよう、申請の手続きを検討してみてはいかがでしょうか。

しかし、障害年金の申請は、時間がかかる場合があります。
焦らず、一つずつ手続きを進めていきましょう。
もし、何か分からないことがあれば、お気軽に社会保険労務士など専門家にご相談ください。

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