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発達障害と診断された…障害年金、どこから始めればいい?

近年、発達障害に関する理解が深まり、大人になってから診断を受ける方も増えています。しかし、発達障害の特性は人それぞれであり、日常生活や仕事に支障が出ている程度も様々です。

障害年金は、病気やけがなどによって障害を負った方が、生活を維持するために必要な経済的な支援を受けるための制度です。発達障害も、障害年金の対象となる障害の一つです。

発達障害で障害年金を受給するためには、いくつかの条件を満たす必要があります。また、申請手続きは複雑で、なかなか理解しにくいのが現状です。

発達障害を抱える大人と障害年金について、わかりやすく解説していきます。

目次

発達障害の種類と特徴

発達障害は、大きく分けて以下の4種類に分類されます。
・自閉スペクトラム症(ASD)
・注意欠如・多動症(ADHD)
・学習障害(LD)
・その他の発達障害

1. 自閉スペクトラム症(ASD)
ASDは、発達障害の中でも社会性やコミュニケーション、特に言語を介さないやり取りに困難さを抱える障害です。
障害が軽度な場合、本人が自覚していないこともあり、配偶者等の身近な人から勧められて受診することも良くあります。
大人になるまでASDが発覚しないようなケースでは、障害が軽度であったり、知的能力が高かったりして、本人が苦労して適応していることが多いといえます。

ASDの症状は人によって様々ですが、以下のようなものが挙げられます。
・人の表情や、場の雰囲気を察することが苦手
・曖昧な言い方が理解できない
・言葉の裏が読めない
・急な予定変更に対してパニックになる
・気分の変調をきたしやすい
・好きな物、関心があるものに偏りがある
・集団行動が苦手
・感覚過敏、感覚鈍麻


2. 注意欠如・多動症(ADHD)
ADHDは、注意力の欠如や、衝動性、落ち着きのなさなどの多動性を症状とする脳の神経障害です。人目に付きやすい多動がないと、障害の存在が目立たず、発達障害に気づかれにくくなります。これらの症状が関連しあって、忘れ物や遅刻、人間関係のトラブル等様々な困難を引き起こします。

ADHDの症状は人によって様々ですが、以下のようなものが挙げられます。
・注意欠如
・計画性が乏しく、その場の思い付きで行動してしまう
・じっと座っていられない
・時間が守れない
・順番待ちが苦手
・思ったことをすぐ口にしてしまう
・危険なことを平気でしてしまう
・整理整頓ができない
・同時にいくつものことを並行してできない


3. 学習障害(LD)
LDは、ASDにもADHDにも該当せず、学習に何らかの障害がある状態です。
知能に遅れがなく、脳や神経に器質的な異常がないにも関わらず、字や文章を読むことが苦手な「読字障害」や、文字を書くことが苦手な「書字表出障害」、数字や計算が苦手な「算数障害」などの症状が現れます。
就学時以降に見つかることが多く、症状が少なくとも6か月以上続いているかどうかなどを見て判断されます。

LDの症状は人によって様々ですが、以下のようなものが挙げられます。
・文字を間違って読む
・文章の意味が理解できない
・スペルミスが多い
・作文を書くのが苦手
・計算間違いが多い


4. その他の発達障害
上記以外にも、以下のような発達障害があります。
・知的障害
・コミュニケーション障害
・運動障害        等

発達障害は、時代によって名称や分類が変わっているものもあります。
それぞれの症状は併発することがあります。

大人になってから発達障害と診断される場合

近年「自分は発達障害だと思うので調べてほしい」と診断に積極的なケースが増えているようです。
発達障害の人は、「努力が足りない」「悪意がある」と誤解されることも多いので、発達障害の診断を受けて周囲の理解を得たいという気持ちもあるのでしょう。

本人に限らず、職場の同僚や上司、家族など周りの人達が発達障害を疑い、受診を勧めるケースも増えています。
そのような場合、職場や家庭で適応上の問題を起こしていることが多くあります。
例えば、職場でのミスが目立つ、注意力や集中力の欠如、コミュニケーションが取れないため指示が理解できない、周りに合わせることができないためチームワークが成り立たないなどの仕事上のトラブルが多発しているという状況です。
家庭内でも、コミュニケーションが上手くいかない、ご近所や親せきづきあいができないなど支障をきたしているケースもあります。

また、発達障害であるが故の葛藤、ストレスから様々な精神症状を来します。
例えばASDの2次障害として、強い対人緊張や対人不安から社交不安障害や強迫性障害(パニック障害、PTSDなどの不安障害)が見られることがあります。
社交不安障害では、重度になると人と会うことを避けるようになったり、外出することもできなくなるなど、日常生活に支障が出ることもあります。
また、激しい精神症状を示す場合は、適切な薬物治療が必要です。

発達障害における障害年金の受給条件

発達障害の特性の現れ方や程度には個人差があります。しかし、先ほど述べたように、日常生活や就労に支障が出る場合もあります。
一定の条件を満たせば、発達障害でも障害年金を受給することができます。

〇障害年金の受給条件
障害年金を受給するためには、以下の3つの条件を満たす必要があります。

・初診日要件:原因となった病気やケガで初めて診療を受けた日に公的年金に加入していた
・保険料納付要件:初診日の前日において、保険料の納付要件を満たしていること
         (20歳前の年金制度に加入していない期間に初診日がある場合は納付要件は不要です)
・障害状態要件:障害認定日に障害等級1級~3級に該当する程度の障害の状態であること

1. 初診日
初診日は、原則として、初めて発達障害と診断された医療機関を受診した日となります。

2. 保険料納付期間等
・初診日のある月の前々月までの被保険者期間で、国民年金の保険料納付済期間と保険料免除期間を合わせた期間が3分の2以上あること(厚生年金被保険者期間、共済組合組合員期間を含む)
・次のすべての要件に該当すれば、納付要件を満たすものとする(納付要件の特例)
 1.初診日において65歳未満であること
 2.2026年(令和8年)3月31日以前に初診日がある
 3.初診日の前日において、初診日がある月の2か月前までの直近1年間に保険料の未納期間がないこと

3. 障害等級
障害年金の受給には、障害等級という判定基準があります。
障害等級は、1級から3級まであり、日常生活や就労の制限度によって区分されます。
(障害基礎年金1級~2級、障害厚生年金1級~3級)
各等級に相当すると認められるものを一部例示すると次のとおりです。

1級:発達障害があり、社会性やコミュケーション能力が欠如しており、かつ、著しく不適応な行動が見られるため、日常生活への適応が困難で常時援助を必要とするもの
2級:発達障害があり、社会性やコミュケーション能力が乏しく、かつ、著しく不適応な行動が見られるため、日常生活への適応にあたって援助が必要なもの
3級:発達障害があり、社会性やコミュケーション能力が不十分であり、かつ、社会行動に問題が見られるため、労働が著しい制限を受けるもの

・日常生活能力等の判定にあたっては、身体的機能や精神的機能を考慮したうえで、社会的な適応性の程度によって判断されます。

・就労支援施設や小規模作業所などに通っている、雇用契約により一般就労している、援助や配慮の下で労働に従事している等の場合も、仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況等を十分確認したうえで、日常生活能力を判断することとなっています。
「仕事をしていると、障害年金は受給できない」というわけではありません。

障害年金の申請方法

障害年金の申請は、最寄りの年金事務所又は市区町村役場で行います。
社会保険労務士に相談された場合は、社会保険労務士が代理申請することも可能です。
申請には、診断書や受診状況等証明書、その他の必要書類が必要です。
申請の流れは、以下の通りです。

申請手続き
①受診歴、通院歴等を思い出して整理し、初診日を特定する
②初診の医療機関にカルテが残っているか、電話や訪問で確認する
(正確な初診日を確認する)
③年金事務所、市区町村役場で、初診日の前日時点における年金保険料の納付が足りているか確認する
④納付要件を満たしていれば、申請書類一式を受け取る
⑤初診日の医療機関に受診状況等証明書(初診日の証明書)の依頼をする
⑥医師に診断書の依頼をする
⑦病歴・就労状況等申立書(発病から現在までの病歴や生活状況、就労状況の申立書)を作成する
⑧戸籍謄本などその他必要書類を集める
⑨年金事務所、または市区町村役場へ書類を提出する
⑩審査期間は約2~3か月程度(疾病等の状況により長引くこともあります)
⑪受給が決定すると、年金機構から自宅へ年金証書が郵送される。
 不支給の場合は、不支給又は却下通知書が届く
⑫年金証書が届いてから1~2か月で最初の年金が振り込まれる
⑬以後、2か月に1度、偶数月の15日に2か月分の年金が振り込まれる

医師の診断書は、障害年金の審査において非常に重要な役割を果たします。
診断書に認定日や現在の病状が過不足なく盛り込まれていなければなりません。
必要なことを正しく書いてもらうためには、日頃から生活状況や就労状況などを限られた診察時間の中で、医師に細かく伝えてカルテに記録してもらうことが大事です。
医師の前でなかなかうまく話せないと感じるのであれば、生活状況等のメモを書いて手渡すのも有効でしょう。

その他の必要書類は、申請内容によって異なりますが、一般的には以下のようなものがあります。
・年金手帳
・障害者手帳(精神保健福祉手帳、療育手帳)
・診察券
・免許証(運転免許証、健康保険証など)
・マイナンバーカード
・銀行口座の通帳

受給条件や申請手続きについて詳しくは、最寄りの年金事務所、市区町村役場
あるいは社会保険労務士にお問い合わせください。

初診日が分からない場合は、こちらをご覧ください。

発達障害で障害年金を受給後の生活

発達障害で障害年金を受給した後は、これまで抱えていた経済的な不安が軽減されます。
働きながら障害年金を受給することは可能なので、無理なく自分にあったペースで仕事をすることもできます。
生活の安定が、心の安定にもつながります。

〇発達障害で障害年金を受給している方の生活例

Aさん(30代男性)

診断:自閉スペクトラム症
障害等級:2級
就労状況:障害者雇用枠で事務職として勤務
Aさんは、発達障害によるコミュニケーションの困難や不注意などの症状があり、一般企業での就労は困難でした。しかし、障害者雇用枠で事務職として勤務することで、自分に合った仕事を見つけることができました。新しい職場では、周囲の理解もあり、精神的にも安定して仕事を続けています。


Bさん(40代女性)

診断:注意欠如・多動症
障害等級:2級
就労状況:短時間勤務社員
Bさんは、注意欠如・多動症による集中力の欠如や衝動性などの症状があり、フルタイムでの就労は困難でした。障害年金を受給しながら、自分のペースで仕事ができる短時間社員として働いています。働きながら、心療内科への通院を継続し、症状が改善され、日常生活や仕事をよりスムーズに送ることができています。

発達障害での受給事例はこちらから

まとめ

発達障害で障害年金を受給することは、経済的な不安を軽減し、より充実した生活を送るための大きな助けとなります。
障害年金を受給した後は、自分に合った方法で活用し、生活の質向上を目指しましょう。

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