障害年金 高次脳機能障害でも受給できます
脳梗塞やくも膜下出血などの脳血管障害や、事故などによる脳の損傷、心肺停止による低酸素脳症などで脳を損傷し、怒りっぽくなったり物覚えが悪くなったりなど、今までに見られなかった症状が現れることがあります。
これを高次脳機能障害といいます。
今回は、高次脳機能障害についての解説、障害年金やその他利用できるサービスについてお伝えします。
目次
高次脳機能障害とは
医療技術の進歩により、脳血管疾患や外傷による脳の損傷などの救命率は上昇しています。その一方で脳の損傷による後遺症に悩まされる方も少なくありません。
「高次脳機能障害」とは、脳の損傷により、注意力や記憶力、感情のコントロールの能力などに問題が生じ、日常生活や仕事、社会生活が困難となる障害のことです。
「高次脳機能障害」は外見から障害があることがあまりわからないため、他人からの理解を得ることが難しいという問題があります。そのため周囲の人達から誤解を受けることも多く、身体の辛さだけでなく、精神的な負担も大きくなります。
また、本人だけでなく支援者や家族の負担も少なくはありません。
高次脳機能障害の症状
損傷を受けた部位や重症度によって現れる症状は様々ですが、以下のような症状が認められます。
〇注意障害
気が散りやすく、注意散漫になる。ぼんやりしていて反応が鈍い。
・集中力に欠け、集中力を持続できない。
・作業を行うスピードが遅く、時間がかかる。
・一つのことに集中してしまい、他のことに取り掛かれない。
〇記憶障害
人の名前や顔が覚えられない。同じことを何度も聞いたり、話したりする。
・約束ができない、守れない。
・時間が少し空いたり、注意がそれたりすると、思い出すのが難しくなる。
・記憶の欠落部分を無意識に補おうとして、事実とは異なることを話すことがある。(作話)
〇遂行機能障害
日常生活や仕事の内容を計画して実行することができない。
・見通しを立てられず 、一つ一つ指示しなければ行動できない。
・自ら行動を開始できない。
・予期せぬ出来事が起きると、混乱し、行動が止まってしまう。
・物事の優先順位が決められない。
・要点を絞り込むことが難しい。
・物事を段取りよく進めることができない(柔軟性が乏しく、効率よく対応できない)。
・必要に応じて誤りを修正し、計画を変更することができない。
〇社会的機能障害
自分の感情や行動をコントロールすることができない。
・すぐ他人を頼るようなそぶりを示したり、年齢よりも幼い態度を取ったりする(依存性・退行) 。
・自身の欲求に従って行動する (例えば、食べたいと思ったら目の前にあるものすべて食べてしまう など )(欲求コントロール低下) 。
・感情をうまく抑制することができず、些細な出来事に対して急に怒りだ す (感情コントロール低下) 。
・状況を理解したり、相手の考えていることを察したり共感したりすることが難しくなる(対人技能拙劣) 。
・一つのものごとにこだわって、簡単に気持ちを切り替えられない(固執性)。
・周囲に無関心で、他者に指示されないと動けず、自発的な行動が見られない(意欲・発動性の低下) 。
・些細なことで泣いたり、笑ったりして止まらなくなることがある(感情失禁)。
〇半側空間無視
目の前の空間の半分(多くは左側)に注意が向かない。
・気づきやすい側のみに、首が向いている(右側を向いていることが多い)。
・食卓の片側にある皿に気づかず、食べようとしない。
・車椅子をこぐ際、片側の物や壁にぶつかる。
・体の片側を洗い残す。
・片側の袖を、きちんと通せていないことに気づかない。
〇失語症
話す、聞いて理解する、書く、読むことが困難となる。
・言いたいことは頭の中にあるのに言葉が出てこない。
・言い間違いをする。
・言われたことの内容が理解できない。
・文字が理解できない。
・文字が書けない。
〇失行症
麻痺はないのに、意図した動作や指示された動作ができなくなる。
・フォークを逆さまに持ち食べる 。
・着替える方法がわからず混乱してしまう 。
・歯ブラシの使用方法がわからず、唇をブラッシングする 。
〇地誌的障害
地理や場所が分からなくなる。
〇失認症
見ているもの、聞いているもの、触っているものが分からなくなる。
・ハサミを見てもそれが何であるかわからないが、触るとハサミとわかる。
・麻痺のある手足が自分の体の一部であるという認識が薄い、あるいは他人の手足と主張する。
その他にも、自身の病気や障害に対する認識・理解が欠如したり、疲れやすい、抑うつ傾向になるなど様々な症状があります。
高次脳障害ハンドブック(大阪府障がい者自立支援協議会)より抜粋
高次脳機能障害も障害年金の対象となります
高次脳機能障害も、障害年金の受給要件を満たしており「障害認定基準」に該当する状態であれば、障害年金の支給対象となります。
障害年金とは、病気やけがのために日常生活や仕事に支障が出るようになった場合に、現役世代の方も含めて受け取ることができる年金のことです。
障害年金は、対象となる病気やケガにより医師の診察を初めて受けた日(初診日)に加入していた年金制度によって、障害基礎年金(国民年金)、障害厚生年金(厚生年金)があり、厚生年金の場合は障害年金の支給対象とならなかった場合でも障害手当金(一時金)を受け取ることができます。
障害年金の受給要件は3つあります。
①初診日を特定し証明する
②初診日の前日において保険料納付要件を満たす
③障害認定日における障害の状態が認定基準に該当する
障害の状態が認定基準を満たしていても、年金保険料の未払い等があると、障害年金を受給することはできません。
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障害年金申請時のポイント
高次脳機能障害により、障害年金の申請を行う際のポイントは以下のとおりです。
①自分の症状を医師に確認し、初診日を確定させる
高次脳機能障害の症状は人により大きく異なるため、自分では気づかない症状が発現することがあります。家族など周囲の人の話も聞き、自分の症状を把握することが重要です。
初診日を確定するためにも、最初に受診した病院にも問い合わせを行っておきましょう。
②必要書類の記載欄はできるだけ明確に
障害年金の申請書類には「日常生活及び就労に関する状況について」という欄があります。ここに日常生活や仕事に障害が及ぼす影響を、詳しく記入する必要があります。どのような症状があらわれているのかだけでなく、どのような支障があるのか、仕事や生活をするうえでどのような支援が必要なのかを具体的に記入しましょう。
③高次脳機能障害以外の障害があれば診断書が別途必要
高次脳機能障害者は記憶障害などの症状以外にも、身体麻痺などの障害が残る場合があります。そのような場合には、高次脳機能障害の診断書と併せて、肢体の障害の診断書も必要となる場合があります。
障害年金以外に高次脳機能障害の方が受けられるサービス
障害年金以外に高次脳機能障害の方が受けられるサービスは、様々なものがあります。どのようなものがあるのか解説していきます。
〇障害者手帳
障害者手帳は、身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳の3種の手帳のことをいいます。それぞれの根拠法は違いますが、いずれの手帳を持っている場合でも、障害者総合支援法の対象となり、様々な支援策が講じられています。
高次脳機能障害は「器質性精神障害」として、精神障害者保健福祉手帳の申請が可能です。障害者手帳の交付を受けると、その等級に応じて税金の控除や公共交通機関の運賃や通行料の割引などを受けることができます。(等級により該当しない場合があります。)
〇自立支援医療制度
自立支援医療制度とは、精神疾患の治療のため、通院する人の医療費の負担を軽減し、継続して治療を受けやすくするための制度です。健康保険を使って治療した場合に、医療機関や薬局の窓口に支払う自己負担が原則1割負担で済みます。世帯の状況や治療の状況によっては、月額負担の上限が設けられており負担が軽減されます。
高次脳機能障害の方は、自立支援医療(精神通院医療)の申請が可能です。また、診断書(精神通院医療)には、適切な診断名が記載されていることと、具体的な症状や生活障害の記載によって重傷度が確認できること、精神疾患に対して継続的な精神療法や薬物療法を必要とする旨を確認できることが必要です。 申請等の窓口は、お住まいの市町村の障害福祉担当課となります。
〇障害福祉サービス
障害福祉サービスは、個々の障害のある人々の障害程度や勘案すべき事項(社会活動や介護者、居住等の状況)を踏まえ、個別に支給決定が行われる「障害福祉サービス」と、市町村の創意工夫により、利用者の方々の状況に応じて柔軟に実施できる「地域生活支援事業」に大別されます。
「障害福祉サービス」は、介護の支援を受ける場合には「介護給付」、訓練等の支援を受ける場合は「訓練等給付」に位置付けられ、それぞれ利用の際のプロセスが異なります。
障害福祉サービスは多種多様なものがあります。希望する障害福祉サービスがある場合は、その内容や利用方法などについてお住まいの市町村の障害福祉担当課にご相談ください。
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まとめ
今回は、高次脳機能障害とは何かその症状、障害年金の申請の可否、申請のポイントや高次脳機能障害の方が使える障害福祉サービスなどについてお伝えしました。
事故にあったり突然の脳血管疾患の発病などは、だれにでも起こりえることです。
そして目に見えない障害を発症し、周りの理解を得られず苦しんでおられる方も少なくありません。
また、仕事ができなくなり経済的にも困窮するといった状況も考えられます。
そのような状態になった時に、障害年金を活用することで心身の負担を軽減することができます。
そしてご自身が利用できる制度やサービスを知ることは、さらに充実した生活を送る助けとなることでしょう。
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