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病気になっても仕事を続けるために 治療と仕事の両立支援



人は誰しも病気になったりけがをしたりします。

そのために障害を持つことになる可能性もあります。

以前であれば就業が困難な病気やケガある人でも、医療の発達や制度の充実により、就業を考えることができるようになりました。

治療と仕事の両立支援は、「育児」や「介護」とともに三大両立支援の位置づけとなってきました。

会社や事業者にとっても、重要な取り組みの一つといえます。

2016年2月、厚生労働省は

「事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン」を公表しました。

ガイドラインでは治療が必要な疾病を抱えた労働者が、

業務によって疾病を悪化させたり、仕事を辞めたりすることが無いよう

事業場における就業上の措置、治療に対する配慮が行われるよう求めています。

目次

疾病を抱える労働者の状況

企業を対象に実施したアンケート調査「治療と職業生活の両立等支援対策事業」(平成25年)によると
疾病を理由として1か月以上連続して休業いている従業員がいる企業の割合は、
メンタルヘルスが38%、がんが21%、脳血管疾患が12%となっています。

また、労働安全衛生法に基づく一般健康診断において、脳・心臓疾患につながるリスクのある
血圧や血中脂質などにおける有所見率は、年々増加しており、平成26年は53%に上るなど、
疾病のリスクを抱える労働者は増える傾向にあります。

このような傾向は年齢が上がるほど高くなります。
高齢化の進行に伴い、今後は職場においても労働者の高齢化が見込まれます。

このような状況の中、職場において疾病を抱えた労働者の治療と仕事の両立への対応が必要となる場面は
さらに増加すると予測されます。

就業可能性の向上と課題

診断技術や治療法の進歩により、かつては「不治の病」とされていた疾病の生存率が向上し、
「病気と上手に付き合いながら」生きていくことが可能な時代となっています。
そのため労働者が病気になったからといって、すぐに離職しなければならないという状況が
必ずしも当てはまらなくなってきました。

しかし、医学が進歩したとしても、職場における疾病への理解が不足していたり、
支援体制が未整備なままだと、適切な治療を受けらず病気を悪化させてしまう人や、疾病のために離職に至ってしまう人が存在することにつながります。

例えば、糖尿病患者の約8%が「仕事(学業)が忙しいから」という理由で、通院を中断しています。
また、連続1か月以上の療養を必要とする社員が出た場合、
「ほとんどが病気休暇を申請せず退職する」「一部に病気休職を申請せず退職する」とした企業は、
メンタルヘルス不調の場合18%、その他身体疾患15%であり、
過去3年間で新たに病気休暇を申請した社員のうち38%が復職せず退職しています。

企業にとっては大切な人材を失うことは大きな痛手であり、生産に影響を及ぼすものです。
また、企業が疾病に罹患した社員に何も手立てを講じないとなれば、社員にとっては「この企業で働いても、大切にしてもらえない」と感じ、モチベーションの低下など様々な影響が出てくることが考えられます。

事業場における現状と課題

事業場では、労働者の健康確保や疾病・障害を抱える労働者の活用に関する様々な取り組みが
実施されてきました。
近年では、健康経営やワークライフバランス、ダイバーシティ推進、といった観点からも推進されています。

一方で、治療と仕事の両立支援の取り組み状況は事業場によって様々であり、支援方法や
産業保健スタッフ・医療機関との連携について悩む事業場の担当者が多くいることも現実です。

関連リンクはこちら

治療と仕事の両立支援 どのような疾病が対象か

この「治療と仕事の両立支援ガイドライン」は、主に事業者や人事担当者、産業医、看護師等の産業保健スタッフを対象としていますが、労働者本人や家族、医療機関などの関係者も活用が可能です。

ガイドラインが対象とする疾病は、がん、脳卒中、心疾患、糖尿病、肝炎、その他難病など、反復・継続して治療が必要となる疾患です。ですので、短期間で治る疾病は対象としていません。

また、すでに雇用している労働者だけでなく、治療が必要な方を新規採用し、職場に受け入れる場合にも
このガイドラインを参考に取り組むことが可能です。
さらに、雇用形態にかかわらず、すべての労働者が対象となります。

治療と仕事の両立支援を行うに当たっての留意点

まず治療と仕事の両立支援を行うに当り留意すべき事項があります。

(1)安全と健康の確保
就労によって疾病の悪化や労働災害の発生につながらないように就業場所や作業の転換、労働時間短縮、深夜業の回数減少や日勤への変更などの就業上の配慮を就業規則や事業場の特性、労働契約の内容を検討します。
その場合、繁忙期であること等の合理的でない理由で就業上の配慮を実施しないことが無いようにします。

(2)労働者本人による取組
疾病を抱える労働者本人が、主治医の指示に従って治療を継続すること、注意事項を守ること等、疾病の増悪防止や治療に適切に取り組むことが重要です。

(3)労働者本人の申出
両立支援は、私傷病にかかわるものであることから、労働者本人から支援を求める申出がなされることが基本となります。そのためにも、職場においては制度周知や研修などを行い、申出がしやすい環境を整備することが重要となります。

(4)治療と仕事の両立支援の特徴を踏まえた対応
通院や入院などの時間や日数がかかること、症状、治療の副作用、障害などのより業務遂行能力が低下する場合があることから、時間的制約に加えて、健康状態や業務遂行能力も踏まえた就業上の措置等が必要となります。

(5)個別事例の特性に応じた配慮
症状や治療方法などは個人ごとに異なるため、個別事例の状況や特性に応じた配慮が求められます。

(6)対象者、対応方法の明確化
事業場内の状況に応じて、事業場内ルールを労使間の理解を得て制定する等、治療と仕事の両立支援の対象者や対応方法などを明確にしておくこと、周知することが必要です。

(7)個人情報の保護
病状などは特に配慮が必要な個人情報です。労働安全衛生法に基づく健康診断などを除いては、事業者や会社は本人の同意なしに取得してはなりません。
また、同意のもと取得した健康情報などの個人情報については、取扱者の範囲、第3者への漏洩防止のためのルール化など、適切な情報管理体制の整備が必要です。

(8)両立支援にかかわる関係者間の連携の重要性
治療と仕事の両立支援を行うに当たっては、労働者、主治医、職場・人事、産業保健スタッフなど多くの関係者がいます。このような関係者が連携して支援を行うことで、より適切な支援が可能となります。
そして、このような関係者間の情報や対応の連携において、事業場内のキーパーソンや両立支援コーディネーター(※)の活用が重要となります。

(※)両立支援コーディネーター
治療と仕事の両立に向けて、支援対象者、主治医、会社・産業医などのコミュニケーションが円滑に行われるよう支援する者とされています。支援対象者が治療と仕事を両立できるよう、それぞれの立場に応じた支援の実施及び両立支援に関わる関係者との調整を行うことがその役割として求められていますが、労働者健康安全機構では研修事業を実施し、両立支援コーディネーターの養成を図っています。

両立支援を行うための環境整備(実施前の準備事項)

事業場において、両立支援を行うための環境整備として取組む内容として、以下の事項が望ましいとされています。

(1)事業者による基本方針等の表明と労働者への周知
事業者として、両立支援に取り組むに当たっての基本方針やルールを作成し、すべての労働者へ周知することで、両立支援の必要性への理解促進や実施しやすい職場風土作りを目指しましょう。

(2)研修等による両立支援に関する意識啓発
研修等を通じて、当事者やその同僚となりえるすべての労働者、管理職に啓発の機会を設けることも重要です。

(3)相談窓口等の明確化
相談窓口を設置して、労働者が申出しやすい環境を整備し、気軽に制度の質問や相談ができる環境を整えましょう。

(4)両立支援に関する制度・体制等の整備
治療と仕事の両立支援においては、短時間の治療が定期的に繰り返される場合、就業時間に一定の制限が必要な場合、通勤による負担軽減のため出勤時間をずらす必要がある場合などがあるために、以下のような休暇制度、勤務制度について、事業場ごとに検討、導入、配慮を行うことが望ましいとされています。

〇休暇制度
(時間単位の年次有給休暇、傷病休暇・病気休暇)
労使協定により年次有給休暇を時間単位で取得する制度を設ける場合、短時間の治療で繰り返し外来通院する場合には極めて有効的です。
事業者により自主的な制度として年次有給休暇とは別に「傷病休暇・病気休暇」を設ける場合は、賃金の取り扱いなどもルール化しましょう。

〇勤務制度
(時差出勤制度、短時間勤務制度、在宅勤務(テレワーク)、試し出勤制度)


病気になっても仕事を続けるために

労働者が治療と仕事の両立を図るための事業者による取り組みは、労働者の健康確保という意義、
継続的な人材の確保、労働者の安心感やモチベーションの向上による人材の定着・生産性の向上
健康経営の実現、多様な人材の活用による組織や事業の活性化、労働者のワークライフバランスの実現といった意義もあると考えられます。

「事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン」では、がん、脳卒中、心疾患、糖尿病、
肝炎など、反復・継続した治療が必要な疾病に罹患した労働者に対し、事業場において適切な就業上の措置や治療に対する配慮が行われるよう、事業場における取組をまとめています。

職場における意識啓発のための研修や、治療と職業生活を両立しやすい休暇制度・勤務制度の導入などの環境整備、治療と職業生活の両立支援の進め方について解説しています。

このガイドラインを活用し、病気やけがのために離職せず、治療と仕事が両立できる職場づくりに取り組みましょう。

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