年末特別企画:仕事をしながらの障害年金申請で、絶対に知っておきたい3つのこと

当事務所へ今年寄せられたご相談の中で、最も多かったのが「仕事をしながらでも障害年金は受け取れますか?」という切実な疑問でした。 「働いていると、日常生活に支障がないと判断されてしまうのでは?」という不安から、申請をためらっている方が非常に多いことを痛感した一年でもあります。
そこで今回は、今年特に多かった「就労と障害年金」にまつわる疑問を中心に、Q&A形式で解説していきます。今年のうちに、その不安を安心に変えていきましょう。
目次
- ○ Q1:フルタイムで働いていたら、絶対に受給できないのでしょうか?
- ○ Q2:会社から受けている「配慮」は、診断書にどう反映させればいいですか?
- ○ Q3:障害者雇用(特例子会社など)での勤務なら、2級の可能性はありますか?
- ○ 「働いているから」と、一人で悩みを抱え込まないでください。
Q1:フルタイムで働いていたら、絶対に受給できないのでしょうか?
A:結論から言うと、フルタイムだからといって即「不支給」になるわけではありません。
大切なのは「どのような状態で働いているか」です。
特に精神疾患などの場合、数値で測れない「日常生活の制限」をどう証明するかが鍵になります。
法律上、「働いている=不支給」という規定はありません。しかし、審査官は「フルタイムで働けるなら、日常生活も問題なく送れるのでは?」という視点で書類を見ます。 ここで重要なのは、「労働が継続できている理由」を明確にすることです。
帰宅後や休日の状態: 職場では普通を装って働けていても、帰宅した途端に糸が切れたように動けなくなり、入浴や食事、掃除などの家事が一切できない状態であれば、それは「日常生活能力が著しく低い」とみなされます。そのような「仕事以外の時間の支障」を伝える必要があります。
仕事内容の制限:調子が良い時だけ働けても、欠勤や早退を繰り返している場合は「労働能力がある」とは評価されません。1年を通した「通院回数」や「就労状況」を正直に伝えることが重要です。
又、 単純作業しかできない、責任のある仕事は外してもらっているなど、労働の質が制限されていることを主張します。
数値化できない辛さ: 倦怠感、意欲の減退、集中力の欠如など、無理をして勤務を継続している実態を申立書で補足することが不可欠です。
Q2:会社から受けている「配慮」は、診断書にどう反映させればいいですか?
A:ご自身で医師に伝えるだけでなく、客観的な事実として伝える必要があります。
「短時間勤務」「休憩室の利用」「残業免除」「指示をメモで出してもらう」といった具体的な配慮の内容を、診断書の「就労状況」欄に正しく記載してもらうことが、審査において非常に有利な材料となります。
医師は診察室での様子しか見ていないため、職場での配慮については本人が伝えない限り、診断書に反映されません。
診察室では「仕事はどうですか?」「なんとか頑張っています」と答えてしまいがちですが、実際には「周りの助けがあって、ギリギリの状態で立っている」という裏側の事情を伝えることが重要です。
以下のステップで進めると効果的です。
①就労状況に関する申立書(任意提出)の活用
会社がどのような配慮をしているか(休憩時間の延長、指示系統の限定、通院のための休暇など)をメモにまとめ、医師に渡します。
②「援助」の具体化
単に「配慮がある」と書くのではなく、「上司が常時横について指示を出している」「パニック時の避難場所が確保されている」など、具体的なエピソードを盛り込んでもらうよう依頼しましょう。
③診断書「ウ」欄の重要性
診断書の「日常生活能力の判定」において、単身で生活していると仮定した場合の不自由さを適切に評価してもらうよう、医師とコミュニケーションを取ることが重要です。
Q3:障害者雇用(特例子会社など)での勤務なら、2級の可能性はありますか?
A:はい、十分に可能性があります。
障害者雇用は、雇用側が障害を前提に「相当な配慮」を行っている環境です。この場合、たとえフルタイムであっても「一般就労が困難であり、配慮があるからこそ働けている」と評価されるため、2級に認定されるケースは少なくありません。
障害者雇用枠での就労や特例子会社等での就労は、たとえ正社員採用やフルタイム就業であっても「保護的な環境下での就労」とみなされます。
健常者と同じ条件で競う一般就労に対し、障害者雇用は「障害があることを前提とした業務設計」がなされています。この「保護」があるからこそ働けているという事実は、2級(日常生活に著しい制限がある状態)の判定に大きく寄与します。
例えば、職場にジョブコーチが定着支援に入っていたり、福祉施設(就労移行支援など)のスタッフが会社との間に入って調整したりしている場合、それは「本人の能力だけでは労働が完結していない」証拠となり、2級認定の強力な根拠になります。
厚生労働省のガイドラインでも、「援助なしには就労が困難な状態」であれば、就労していても2級の可能性を認めています。
障害者雇用枠で働いている場合は、雇用契約書や就業規則、あるいは職場が作成した「合理的配慮の提供内容」に関する書類を参考に、制限の内容を詳しく申立書に記載しましょう。
知的障害の場合は、厚生労働省の指針でも、「療育手帳がB判定であっても、就労状況や日常生活の援助状況によっては2級に認定する」と明記されています。仕事の内容が単純な反復作業に限定されているか、なども重要な判断材料です。
「働いているから」と、一人で悩みを抱え込まないでください。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
今回ご紹介したQ&Aは、今年当事務所に寄せられたご相談のほんの一部に過ぎません。
病気や障害を抱えながら働くことは、目に見えない「疲れ」や「生きづらさ」との戦いでもあります。障害年金は、そうした方々が少しでも心穏やかに過ごせるように、そして無理をしすぎず治療や生活の基盤を整えるために存在します。
「今の自分の状況で、受給の可能性があるのか知りたい」
「医師にどうやって就労の辛さを伝えたらいいかわからない」
「不支給の通知が届いてしまったが、諦めきれない」
そんな思いを抱えている方は、ぜひ一度、当事務所の「無料相談」をご利用ください。
2025年も、残りあとわずかとなりました。 新しい年を、少しでも前向きな気持ちで迎えられるよう、私たちが全力でサポートいたします。
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